マーケティングにおいて「ターゲットオーディエンス(対象顧客層)」という言葉をよく耳にします。弊社のブログ記事でも頻繁に登場する用語です。
この概念は比較的シンプルで、製品やサービスを購入する可能性が高い人々の集まりを指し、その層に向けてマーケティング施策を最適化することが目的です。

では、どのようにしてその層に効果的にアプローチすればよいのでしょうか?その答えが、バイヤーペルソナ(Buyer Persona)」です。

バイヤーペルソナとは、顧客層の中で意思決定者や影響力を持つ人物をモデル化した架空のキャラクターです。名前、興味関心、行動特性、目標、属性など、実在する人物のような詳細な情報を持たせることで、より具体的なイメージを描くことができます。

弊社では、各ペルソナに名前を付けて管理しています。たとえば「テック業界の幹部(The Tech Exec)」のように特徴を表す名称や、「Pfizer社のダニエル(Daniel from Pfizer)」のように実在しそうな名前を使うこともあります。こうすることで、バイヤーペルソナを実際に対話できる人物として捉えやすくなり、より効果的なマーケティング施策の立案につながります。


多くの企業では、製品やサービスを提供する相手が一種類の顧客像だけとは限りません。そのため、各タイプの顧客像に対応するバイヤーペルソナを作成することが重要です。ペルソナの数は、企業の規模や提供する製品・サービスの幅によって異なります。
ターゲットオーディエンスをセグメント化することで、より的を絞ったマーケティングが可能となり、投資対効果(ROI)の向上につながります。また、特定の顧客タイプへの対応方法が明確になることで、生産性の向上も期待できます。

バイヤーペルソナには、「ポジティブペルソナ」と「ネガティブペルソナ」の2種類があります。
ポジティブペルソナは、弊社のメッセージを受け入れ、購入につながる可能性が高い理想的な顧客像です。
一方、ネガティブペルソナは、常に購入しない理由を持っているような、アプローチすべきではない顧客像です。
ただし、ネガティブペルソナも特定する価値があります。なぜなら、関与すべきでない相手を見極めることで、営業活動の効率を高めることができるからです。潜在的なネガティブペルソナの特徴を認識することで、その相手を「行き止まり」として判断でき、結果として営業の生産性向上につながります。


バイヤーペルソナは、現在の顧客層から収集した市場調査データをもとに作成します。可能であれば、営業プロセスの異なる段階にいる顧客から情報を得ることをおすすめします。長期的に関係を築いている顧客だけでなく、最近取引を開始したばかりの新規顧客にもインタビューを行いましょう。また、見込み顧客の意見も非常に有益ですので、忘れずに取り入れてください。

インタビューやアンケートは、実用的なデータ収集手段です。バイヤーペルソナを構築する際には、いくつかの具体的な情報が必要になります。ペルソナは、「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」という4つの問いに対する回答を中心に設計されます。以下は、現在の顧客層の理解やペルソナ作成に役立つ質問例です:


Who:誰が

このカテゴリでは、顧客の人物像を明確にします。好みや性格を把握することで、今後のコミュニケーションの方向性を定めることができます。

  • お名前は?
  • 現在の役職は何ですか?
  • あなたはどの世代ですか?(X世代、団塊世代、ミレニアル世代など)。
  • お住まいはどちらですか?
  • あなたは内向的ですか、それとも外向的ですか?  
  • どのようなコミュニケーションをご希望ですか(Eメール、テキスト、電話など)
  • 細部にこだわるタイプですか?それとも全体像を重視するタイプですか?

What(何を)

このカテゴリでは、顧客の目標や課題を把握します。どのような問題を抱えているのか、どのような解決策を求めているのかを理解することで、長期的な関係構築に向けたステップが見えてきます。ペルソナ作成において最も重要なステップですので、丁寧に情報を収集しましょう。

  • 意思決定のレベルをどのように説明しますか?
  • 長期的な目標は?
  • 短期的な目標は?
  • 成功の尺度は?あなたの評価基準は何ですか?
  • 現在直面している主な課題は何ですか?
  • あなたの課題に対する理想的な解決策は何ですか?

Why(なぜ)

このカテゴリでは、顧客がまだ購入に至っていない理由や、競合他社を選んだ背景など、共通する反論や障壁を明らかにします。既存顧客に対しては、最終的に購入を決断した理由を聞くことで、説得のポイントを把握できます。

  • 弊社の製品・サービスを購入する上で障害となっているものは何ですか?
  • 競合他社の商品/サービスを選んだ理由は?
  • 弊社の製品・サービスについて、どの程度の知識がありますか?
  • 弊社の製品・サービスが属する市場について、どのような情報をお持ちですか?

How(どのように)

このカテゴリでは、顧客の課題を乗り越え、信頼を獲得するために必要な具体的なアプローチを検討します。Who(誰が)What(何を)、Why(なぜ)の情報をもとに、個別のペルソナに対して最適な提案方法を設計します。なお、Howは、ターゲットオーディエンス全体ではなく、特定のペルソナにのみ適用される点に注意が必要です。

このプロセス全体を機能させるのはHow(どのように)であり、それを正しく理解することが重要です。バイヤーペルソナの作成を始める際に、正しい方向性を導くのに役立つ例をいくつかご紹介します。

  • バイヤーA:技術的な知識は限定的で、マーケティング志向が強い。提案では、バイオプロセスに関する知識をわかりやすく示し、製品が用途に適した技術であることを明確に伝えましょう。
  • バイヤーB:企業の意思決定者で、製品には関心があるが予算に制約があります。他の顧客の声を活用し、価格以上の価値(人件費削減、書類作業の軽減、スループット向上など)を訴求しましょう。必要に応じて初回購入時の価格インセンティブを提示するのも有効です。
  • バイヤーC:洗練された印象を持ち、予算にも余裕があるが、反応が読みづらい。データや製品の品質・有効性、顧客の声を中心に提案を構成し、競合との差別化ポイントや業界におけるリーダーシップを自信を持って示しましょう。

顧客とのインタビューの予定がなかなか取れない場合でも、他の方法があります。例えば、今後参加予定の展示会などがあれば、簡単な質問リストをメモカードやスマートフォンに保存しておき、現地で顧客と対面した際に質問してみるのも一つの方法です(バーなどのカジュアルな場面も意外と有効です)。たとえ数問しか聞けなかったとしても、対面で得られる回答には思わぬ発見があるかもしれません。

また、代替手段として、営業担当者や販売代理店に協力を依頼し、各バイヤーペルソナの視点から同様の質問に答えてもらうのも有効です。経験豊富な営業担当者は顧客に関する豊富な知識を持っており、ペルソナ作成において欠かせない存在です。


調査を終えると、どのようなバイヤーペルソナを作成すべきかが明確になります。共通して現れた特徴をグループ化し、それをもとにペルソナを設計しましょう。
例えば、調査結果から「技術的な知識を持つミレニアル世代の女性」が多く見られた場合、それをベースにしたペルソナを作成することができます。
また、「現代的なデジタルマーケティング手法を好まないCEO層」が少数ながら存在する場合は、より自然なコミュニケーションや個別対応を重視するペルソナが必要かもしれません。

バイヤーペルソナは、エレベーターピッチ(短時間での製品紹介)の内容を決めるだけでなく、マーケティング手法の選定にも活用できます。
例えば、対面でのやり取りを好む伝統的な顧客層には、直接会う機会を設けるのが効果的です。一方、デジタル志向の顧客層には、Eメール・キャンペーンとSNS投稿を組み合わせたアプローチが適しています。
ペルソナの活用方法は多岐にわたり、顧客のニーズに応じたマーケティングを実現するための強力なツールとなります。


バイオプロセス分野の典型的なバイヤーペルソナ例:

  • プロセス開発のパティ(Process Development Patty):研究開発部門のリードサイエンティストであり、ラボ用消耗品や原材料の選定における主要な意思決定者。科学的な根拠を重視し、営業担当者からの電話を好まない傾向があります。
  • 調達担当のピート(Procurement Pete):調達マネージャーで、常に最適な価格を求めています。ただし、納期の正確さ、品質の高さ、時にはランチの誘いなど、業務を楽にする付加価値によって心を動かされることもあります。
  • 製造責任者のマニュエル(Manufacturing Lead Manuel):製造現場を統括しており、トラブル発生時に迅速に対応してくれるサプライヤーを求めています。

下記のテンプレートを活用して、貴社独自のバイヤーペルソナを設計してみてください。ご不明点があれば、Hapatuneのマーケティング担当までお気軽にお問い合わせください。
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Hapatuneバイヤーペルソナワークシート
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